2008年10月03日

時の祠 2

 だったら茂田からの依頼を断れば良いのだが、いきなりノーとは言えない性格が災いして引き受けた結果、往々にして相手に迷惑をかけてしまう。自分でもこの性分はなんとかしなくてはいけないと思ってはいるのだが。
 私の主な執筆誌は少年コミック誌の月刊アローとその増刊号で、三ヶ月に一本ぐらいのペースで、読切りのホラー漫画を描かせて貰っている。ここ何作かアンケートの順位が上向きで、今回の順位が良ければ、月刊アローのレギュラー作家になれるかも知れない。そうなれば稿料も上げてくれるだろうから、もうマイナーなコミック誌にバイト代わりの原稿を描き飛ばさなくて済む筈だ。
 そのアローの打ち合わせが遅れている。よって、茂田に義理立てしている余裕はない。この仕事でメシを食うために、果てしなく偏差値の低い大学の学生であるにも関わらず決まった内定を、周囲の反対を押し切り、蹴ったのだ。

 茂田からの電話を切ったあと寝直し、目が覚めたときは午前十時を回っていた。私は茂田に原稿を渡す約束を当人に連絡もせず反故にして、旧いタイプの電話機とは別に引いているファックスの原稿挿入口に、担当編集者との打ち合わせのために、構図やセリフを細かく決めた「ネーム」という名の、下描きの下描きを差し込んだ。
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posted by 猫道 at 19:01| 時の祠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする